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メタバーシティ実現に向けての5つの課題

投稿日 2022年9月19日
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世界各国の大学が仮想大学キャンパス「メタバーシティ」を取り入れ、キャンパスのデジタルツインが構築されていく中、ノースカロライナ大学グリーンズボロ(通称UNCG)の経営学教授Nir Kshetriは、専門家の意見や分析、調査レポートなどを公開するニュースメディア「The Conversation」にて、「5 challenges of doing college in the metaverse」という記事を公開しました。

この記事でNir Kshetriは、メタバース空間で講義を受けることは、物理的に遠くにいる学生のためとなり、より現実的でインタラクティブな3D空間での学習など多くの利点を生む一方、プラバイシーの侵害やセキュリティー保護など倫理的、社会的、実践的な側面において、“5つの課題”があるとしています。

 

1:大幅なコストと時間

メタバーシティは現実世界の大学よりも低コストで一部の学習手段を提供することができます。例えば、解剖実験室の建設には現実世界では数億円の費用がかかり、多くの敷地とメンテナンスが必要となりますが、フィスク大学が提供する仮想の解剖実験室はそれよりもはるかに手頃な価格で構築することができます。

しかし、大学はVRコンテンツのライセンスやデジタルツインキャンパスの建設、VRヘッドセットなど投資の費用が必要です。デジタルツインキャンパスの建設には10万ドルがかかり、メタバースコースのライセンス取得にも費用が発生します。

他にも、VRヘッドセットの管理や維持費、教員のためのトレーニングコスト、メタバース用の新しいデジタル資料など、多大なる時間とリソースを費やす必要があります。

2.プライバシーやセキュリティ、安全に関する懸念

メタバース技術を開発している企業のビジネスモデルとして、VRヘッドセットを利用するとき、ユーザーは個人データを企業に提供することになります。たとえば、MetaのOculus Quest 2のVRヘッドセットを使用したい場合、Facebookアカウントが必要です。

そして、ヘッドセットは学生の位置情報や音声、身体機能や動きなど個人的なデータを収集することができ、ユーザーの目の動きを収集することによって、ユーザーが注目する広告をパーソナライズすることも可能です。

また、仮想環境とVR機器によって収集されたユーザーの身体運動や心拍数、瞳孔の大きさ、感情の信号などのユーザーデータがサイバー攻撃を受けた場合、物理的な被害を受ける可能性もあるという。

3.先進的なインフラ

ほとんどのメタバースアプリケーションは帯域幅を大量に消費するため、メタバース空間のすべての情報を処理するのに高速なデータネットワークが必要となります。

アメリカの都市部に住む人口の97%は高速にアクセスすることができるが、農村部では65%と低く、高品質のメタバースコンテンツのストリーミングをサポートするためにもインフラの整備が必要となってくる。

4.新しい環境への課題に適応する

メタバーシティの構築と立ち上げには、教育や学習において劇的な変化が必要となります。例えば、学生はただコンテンツを受け取るだけでなく、メタバースコンテンツに関する活動に積極的に参加しています

没入型ゲームベースの学習や仮想現実などの高度な技術と人工知能を組み合わせることで、メタバースを通じてパーソナライズされた学習体験を作成することができ、学習の内容やペースを学生の能力と興味に合わせて調整することができる。

5.バイアス(偏見)を増幅させる

性別や人種、イデオロギーの偏見は、科学や歴史などの教科書にありふれており、学生が特定の出来事やトピックを理解する際に影響を与え、メタバースコンテンツは学生のバイアスにより大きな影響を与える可能性があるため、十分な注意が必要となってくる。

 

 

 

このようにNir Kshetriは、教育と学習のためにメタバースの利点を最大化するために、ユーザーのプライバシー保護、教員の訓練、国家レベルのブロードバンドネットワークへの投資と格闘しなければいけないとしている。

また、Nir KshetriはThe Conversationで「Six benefits that the metaverse offers to colleges and universities(メタバースが大学にもたらす6つの利点)」という記事も公表しており、メタバース技術が提供するユニークな経験は若い世代の注目を集める重要なツールとなるともしている。

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